2.コンデンサとコイル
コンプレッションドライバは、中高音域を出力する用途に製造されているため低周波数には対応していません。例えば、Electro Voice社の1823Mの周波数特性は400Hz〜10kHzです。このコンプレッションドライバに、シンセサイザーの低音(400Hz以下)を入力するとダメージを与えてしまいます。ダメージを与えないために、コンプレッションドライバとパワーアンプとの間に、コンデンサとコイル(ハイパスフィルタ)を接続して低周波数をカットすることが必要です。
しかしながら、コンデンサとコイルは特定の周波数以下をバッサリ切ることはできず、緩やかな傾斜で音量を下げて行きます。この傾斜の鋭さはdB/oct(デジベル・パー・オクターブ)で表示され、例えば400Hz以下をカットする場合、6dB/octなら1オクターブ(200Hz)で6dB音量を減衰、12dB/octなら1オクターブ(200Hz)で12dB音量を減衰の様に、数値が大きいほど鋭く低周波数をカットすることができるので、フルパワーでギリギリの低周波数までドライブする場合には数値が高い方法を導入して下さい。

各dB/octによる傾斜の違い
コンデンサとコイルは、直列にコンデンサ1個を接続すると「6dB/octのハイパスフィルタ」として機能し、直列にコンデンサを1個接続し並列にコイルを1個接続すると「12dB/octのハイパスフィルタ」として機能します。更に、複数組み合わせるすることにより18dB/octや24dB/octなども構築することができます。ここでは、低コストで簡単な6dB/octの方法とコンプレッションドライバの許容量までフルパワーでドライブ可能な12dB/octの方法を紹介します。
6dB/octのハイパスフィルタを導入する場合:

この場合には、直列にコンデンサを1個接続するだけなので低コストで簡単です。使用するコンプレッションドライバに適したコンデンサの容量の計算式は、C = 159000(160000)/(R x FC)です:
- C = コンデンサーの容量
(単位はμF/マイクロファラッド)
- R = コンプレッションドライバのインピーダンス
(単位はオーム)
- Fc = カットオフ周波数(コンプレッションドライバの最低周波数)
(単位はHz)
例えば、Electro Voice社の1823Mの場合には「159000 ÷ 8オーム ÷ 400Hz = 50μF」ですので、容量50μFのコンデンサを使用して下さい。しかしながら、6dB/octの方法は傾斜が緩やかなので保護と言う意味を込めてFcを500〜600Hzあたりに設定(容量40〜30μFのコンデンサを使用)した方が良いと思います。
12dB/octのハイパスフィルタを導入する場合:

この場合には、直列にコンデンサを1個接続し並列にコイルを1個接続します。使用するコンプレッションドライバに適したコンデンサの容量の計算式は、C = 113000(112500)/(R x FC)です:
- C = コンデンサーの容量
(単位はμF/マイクロファラッド)
- R = コンプレッションドライバのインピーダンス
(単位はオーム)
- Fc = カットオフ周波数(コンプレッションドライバの最低周波数)
(単位はHz)
例えば、Electro Voice社の1823Mの場合には「113000 ÷ 8オーム ÷ 400Hz = 35μF」ですので、容量35μFのコンデンサを使用して下さい。
使用するコンプレッションドライバに適したコイルの容量の計算式は、L = 225 x R / FCです:
- L = コイルの容量
(単位はmH/ミリヘンリ)
- R = コンプレッションドライバのインピーダンス
(単位はオーム)
- Fc = カットオフ周波数(コンプレッションドライバの最低周波数)
(単位はHz)
例えば、Electro Voice社の1823Mの場合には「225 x 8オーム ÷ 400Hz = 4.5mH」ですので、容量4.5mHのコイルを使用して下さい。